Hiroshima BioMedical Engineering School

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STANDARD3:医療に使用される画像について


ここでは,今日の医療に使用される画像・映像情報についての基礎知識を学びます.

・医療で使用される画像

レントゲン像,X線CT,MRI,PETなど,今日の医療で使用される画像(医用画像)は,そのほとんどがデジタル画像です(*1).デジカメで撮られた画像と同様に,画像を構成する最小単位を「画素」と呼びますが,一般的なX線CT 画像では縦横それぞれ512画素で26万以上の画素がタイル状に並んでいることになります.
図1 レントゲン像、X線CT、MRI、PETの各種画像.

レントゲン像,X線CT,MRI,PETなどの画像の撮影範囲はおおよそ数10cm程度なので,画素はおおよそ0.1mm〜数mmの範囲について,装置によって計測された数値の情報を含んでいることになります.

・画像に記録されているもの

画素に記録されているのは,計測した人体各部の物理的あるいは化学的な情報です.例えば,いわゆるレントゲン像やX線CTは体内の場所ごとのX線の吸収率を表していますが,「磁気共鳴現象」に基づくMRIはさらに複雑です.MRIでは,撮影法によって様々な情報が得られます.たとえば,水素原子の量や動きなどの情報が数値化されて記録できます.(参照:MRIで得られる情報)

・画像でわかる体内の構造

体内ではこれらの数値が臓器や組織ごとに異なるため,画像を表示した時にその違いが明確な境界として観察されます.これによって臓器や組織の形状や構造が明らかになり,腫瘍などの病変がある場合には,その存在や形状がわかることになります.これらの形の情報は「形態情報」と呼ばれます.
図2 MRI画像でわかる脳の形状(MRIの脳断面画像).

・画像でわかる体内の現象

一方,血流などの動きが情報として得られる場合があります.このような形状ではない,現象に関する情報を「機能情報」と呼び,これも体内が正常であるかどうかを診断する情報となります.形状が明らかになれば,生体内でおきている現象をシミュレーションである程度推定することができますが,逆に機能情報から臓器や組織の形や構造を推定することも可能で,これを応用したものの一つが拡散MRIによるTractographyです.(参照:Tractography
図3 機能から形状・構造を推定する拡散MRIによるTractography.

・医用画像とノーベル賞

医用画像が今日の医療にとってどれだけ重要で画期的なことであるかは,その原理の発見や装置の開発に対して多くのノーベル賞が送られていることからもわかります.
例えば,レントゲン博士は1901年にX線の発見に対して物理学賞を受賞しています.また,その応用であるX線CTには,1979年に開発者のグループに対して医学生理学賞が送られています.
図4 レントゲン博士の肖像.

一方,MRIには関しては,まずその原理である磁気共鳴現象の計測に対して1944年,1952年に物理学賞,MRIの装置の開発に対して,2003年に医学生理学賞が送られています.

*1 以前は,壁にかけた大きな照明ボックスを使ってフィルムに印刷された画像を見ていましたが,現在では多くの場合コンピュータのモニタ上で観察します.

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