STANDARD5:コンピュータによる分子シミュレーションとは ・コンピュータによる分子シミュレーションについて コンピュータシミュレーションとは,何らかの動きやふるまいを物理法則にもとづいてコンピュータ上でまねることです.現実に結果を確かめることが困難,不可能,危険である場合に使われます.利用例としては,ドライブシミュレータやフライトシミュレータを用いた自動車や航空機の操縦訓練があります. 図1 ドライブシミュレータやフライトシミュレータ. ・分子シミュレーションについて 世の中にある物質は原子・分子が集まってできています.分子シミュレーションとは,コンピュータ上で物理法則にもとづいて原子・分子の集まりを動かして「実験」を行い,物質の化学的性質・物理的性質を調べる方法です.この方法をつかうと,原子・分子のレベルで物質の反応などを「見る」ことで,そのしくみを解明できます.分子シミュレーションには,古典力学を使う分子動力学シミュレーションや量子力学を使う量子化学などがあります.現在は,生命活動のしくみを理解するため,タンパク質,核酸といった生体分子はたらくときの形や運動の変化を調べるのにも使われています. 図2 分子シミュレーション. ・分子動力学シミュレーションについて 分子動力学シミュレーションは,古典力学にもとづきニュートンの運動方程式に従って,原子・分子の集まりの運動を追跡するシミュレーション方法です.数万原子から数百万原子からなるシステムをとりあつかうため,コンピュータの助けを必要とします.タンパク質などの生体分子を対象にするときには,タンパク質とを構成する原子を古典的な粒子とし,原子同士の化学結合をバネとして扱い,ニュートン方程式に従った運動のシミュレーションを実施します. 図3 分子動力学シミュレーション. 前の内容:マイクロロボットと医療応用 次の内容:生体計測について