Hiroshima BioMedical Engineering School

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ADVANCED4:コンピュータによる創薬について


・創薬へのコンピュータシミュレーションの利用について

医薬品とは病気の原因となるタンパク質をターゲットとする分子です.医薬品がそのタンパク質に結合し,機能を制御することで薬効を発揮します.これまでの創薬では,1つの医薬品を開発するのに平均15年の歳月と約500億円のコストがかかると言われています.そこで新薬開発の時間と費用を削減するため,創薬の候補となる分子を効率よく探索することが求められています.そのような中,コンピュータ上で候補分子の探索を行うバーチャルスクリーニング(in silicoスクリーニング)は,膨大な数の分子を高速に評価することができるため,医薬品開発において不可欠なものとなっております.

・バーチャルスクリーニングについて

バーチャルスクリーニングには,大きく分けて2種類あります.一つは,タンパク質に分子をコンピュータ上で結合させてみて,強く結合する分子をデータベースから探す方法で,structure-based drug screening (SBDS)と呼びます.もう一つは薬効があるとわかっている分子に似ている分子をデータベースから探すligand-based drug screening(LBDS)です.SBDSでは,シミュレーション方法としてドッキングシミュレーションや分子動力学シミュレーションを使います.

・ドッキングシミュレーションについて

ドッキングシミュレーションでは,タンパク質の構造に対して分子をコンピュータ上で結合させ,その結合の強さと結合構造を予測する方法です.

図1 ドッキングシミュレーション.

・myPrestoについて

myPresto (Medicinally Yielding PRotein Engineering SimulaTOr) は,医薬品開発支援のために作成された分子シミュレーション計算のプログラム群です.myPrestoのユニークな点は,無償でかつ商業利用を可として提供していることにあります.そこではmyPrestoを媒介とした「オープンで自由参加が可能な創薬エコシステム」の実現が目指されています.

教科書

・タンパク質計算科学:基礎と創薬への応用

創薬を目的としたタンパク質の分子シミュレーション法に関して,基礎から述べられています.付録のCD-ROMには,フリーのソフトウェアプログラムにもとづく,分子動力学シミュレーションと薬物ドッキングシミュレーションの実習のためのサンプルデータと実習の説明があります.

学会・研究会

・The Chem-Bio Informatics Society(情報計算化学生物会)

化学(Chemistry),生物学(Biology),情報計算学(Informatics)という3つの学問分野に関わる先端的な研究開発の基盤構築をめざす学会です.新しい方法論を医薬品の開発研究や生物医学の研究者に紹介するセミナーやワークショップを開催しています.

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